臨配くん物語 #62 多鶴子を担いで【新連載】

BARに戻り、臨配とはなんたるかを語っていた小竹。没頭して力説しているうちに背面にいる多鶴子の方からスースーと寝息がきこえてきた。いったん臨配についてのなにがしについては話をやめて振り向くとそこには夜職をしている女の小悪魔とは無縁などこかあどけない少女のその顔で夢をみているような寝顔だった。

「やれやれ」小竹はまんざらでもないのがすぐに分かるようなため息をBARのマスターに向けすると、多鶴子をマンション前まで送りたい旨をつげ、常連である多鶴子のマンションの所在地をききだし、迎車をお願いした。

「むにゃむにゃ…小竹さん」やがてタクシーがBARの前に横付けされ、多鶴子の肩を脇からくぐるようにして支えて抱きかかえると多鶴子は夢をみているのか寝言で小竹の名前を呼んでいる。そんな仕草も小竹にとって今日の悪夢のような出来事すらなかったことのように思わせられてしまうようだった。

やがてタクシーは多鶴子のマンション前に着き、ここで多鶴子を起こしてこのままこのタクシーで帰宅しようと考えていた小竹は必死になって多鶴子の身体を揺さぶった。

「多鶴子ちゃん!多鶴子ちゃん!起きて!!…自宅ついたよ」小竹が耳元で多鶴子に呼びかける。しばらくして多鶴子はどこか少しおとぼけをかましたような表情でのったりと起き上がった。

「んん?むにゃ?…ここはもう私のうち?」多鶴子は寝ぼけ眼でそういった。

「そうだよ!多鶴子ちゃん僕はこのまま多鶴子ちゃんおろして帰るから…明日も休みだしね」小竹は次の日が休みであることでテンションが上っていることを隠しきれずにそういうと…

「そうしたら〜…すこし私の部屋で飲み直そっか!?」

多鶴子は今度は完全に寝ぼけていない口調でそういった…このとき小竹は完全になくなりかけていた警戒心のかけらの頭角が少しだけまた顔をのぞかせていることに気がついていた。