代配ちゃん物語 #28 ガレージの悲劇【新連載】

やってしまった…しかもこんな時に…

もうほんの猶予もないくらい時間がないというのに…しかもこの事故対応をしていたら間違いなく朝刊を自力で配り終えることはできない…しかも店の誰かを呼べばここまで遅れた理由やら、茉莉花を連れ出して呑んでいたこと、そして飲酒までもバレてしまう。

徳俵は、上着に新聞販売店のシンボルであるウィンドウブレイカーをきているがゆえ、もちろん知らん顔するということはできない。バンパーにめり込んだカブの頭を引き剥がし、倒れていたものを起こしあげると徳俵はしばし、住人が出てくるのを待っていた。

ところがだ!3分ほどまって見たものの全く住人がでてくる気配がない…徳俵は荷台の新聞を整えたり荷台ゴムを巻き直したりして、やってしまったという失意をごまかすように何かしらのことをしながら待っていたがまったくもって中からは誰もでてくる気配がないのだ。

人というのは一瞬、悪魔が心にささやきかけてしまうと、素直に正直に振る舞うという自責の念に貫かれた芯でもない限りはふと心に邪気が宿るものである。

「あれ?あれれれ?もしかしてこのまま誰も出でこない…そしてこのまま何くわぬ顔して立ち去れば…」徳俵はこのケースにおいて考えられる最悪の対処方法が脳裏にささやき始めたことを天のお告げにすら感じてしまうほど動揺し焦っていたのだ。