
あまりにもやりすぎてしまったことに罪悪感を感じた多鶴子は、そのあと小竹を始発まであけているガード下の赤提灯に誘い出す。一度騙され、疑心暗鬼になっている小竹だったが多鶴子の演技には思えないその優しさにまた徐々に信じることをしてみようとその誘いにのった。
商店街を少し一緒に歩くと、週末だからかいまだ喧騒が覚めぬ赤提灯より向こう柄のテーブルやカウンター、そして週末に苛立ちをぶつけるサラリーマンたちでごった返していた。
二人は仕方なく、そのガヤついた赤提灯に入ることを諦め、多鶴子がもう一つとっておきの時にいつも行っているという樽から注ぐスモーキーなウイスキーが飲める大人の隠れ家的なバーがあるから行こうと言い出した。
その店は赤提灯からは徒歩で5分ほどの場所にあり、レンガ調の構えにある木の扉をあけるとそこにはまさに大人の隠れ家と呼ばれているのはここのことと言わんばかりの秘密の空間があった。
カウンターに二人は座ると、多鶴子に促されるまま入れてあるウイスキーのボトルのダブルをロックで飲み始めた。
「さっきはとんでもないことに巻き込んでごめんなさい」多鶴子は開口一番、さきはど小竹の身に起きたことを詫びた。