
「小竹さん…臨配ってなぁに?」またあらためて多鶴子が小竹にたずねた。
「臨配とは…新聞販売店で配達するエリアに欠員が出たときにそのお店に出向いて1日でそのエリアを覚えて、お店にいった次の日からすぐにその欠員の方の代わりになって配達するプロのことだよ」小竹は自身も臨配として働いていた経験から丁寧に多鶴子に教えた。
「でも…その欠員された方が戻ってきたらどうなるの?」多鶴子は続けた。
「欠員した人が戻ってきたり、新しく社員さんやアルバイトがはいってきたら臨配の人はその販売店での仕事を終えるんだ…だいたい3ヶ月くらいから6ヶ月くらいそこにいることが多いけど、早いと2週間や下手したら1週間…長いと5年クラスもあるんだ。」
「ええーでも、そんなに短期間でまた次のお店さがしてたりしたら、いつまでもお金が貯まらないんじゃないの?」さすが多鶴子、ちゃっかり臨配の懐具合についても聞き出そうとしている。
「そこで臨配はいつ上げられるかわからない代わりに、配達しかしないのに社員さんか社員さん以上のお金を貰えるんだ…労働時間も短くにもかかわらずね。」小竹はこの辺になると得意げに答えていく。
「ただ…時間があるがゆえに…」
「ゆえに?」もったいぶったような小竹の話法にすこし焦らされて続きが気になる多鶴子はすこしぶりっ子するわけではないが斜め45度に首をかしげ話に耳を傾けている。