突然の多鶴子の別れ話に、一瞬その場にいる小竹、大輔、多鶴子、三人ともに凍りついてしまった。小竹は手に持っていた多鶴子への手みあげを半ば自らフロアにぶちまけるのと同時に堰を切ったように怒鳴りちらした。
「なんなんだよ!いままでずっとお金も貢いできて生活も面倒見てきて…最後にこの仕打はなんなんだよ!」小竹は女を前にしてその女々しさなどお構いなしに過去に自分が奉仕してきたことを引き合いにだしてきた。
「小竹さん…私は別に…」多鶴子はこのとき、本当は自分からそんなことお願いしてないと言おうとしたのだがもしそれを口にしたらいよいよ収拾がつかなくなることを本能で察知していた。
小竹はそのもじもじと別れの本当の理由がわからないじれったさからかいよいよ自身の感情の行き場をどこにも持っていくことができずついに精神が決壊した。
部屋にあるものをなにこれ構わずに手に取り、壁やフロアに投げつけるほどに怒り狂い始めた。本来、多鶴子のことを考えるのであればすんなりと穏やかに別れられるはずの愛情も、金銭が絡み、肉体が絡んだ関係にあってはまさに愛憎劇さながらの終止符に近い形になりつつあった。