
小竹は激情のまま手にとった椅子を大輔が隠まる押入れに向け力のままうっちゃった。
押入れの襖には小竹が臨配時代にセンターから支給されたウィンドウブレイカーがかけてある。投げた椅子は臨配ウィンドウブレイカーには当たりはしなかったものの、柔い和紙でできた襖のもっとも柔らかい部分に命中した。
バリバリと耳をつんざく音と共に襖の中央部にはぽっかりと大きな穴ができあがってしまった。
そしてその中央部付近には大輔がかくまっており目を凝らすと大輔の足が見えてしまう穴であり、近寄れば小さく丸まっている大輔自身も見えてしまう穴であった。
幸い、小竹は激情し別れ話に夢中であり大輔の存在には気がついていなかった。
大輔は、ここで隠れつづけていてもいずれ小竹に見つかってしまう…大輔の中で小竹との直接対決の火蓋への覚悟が着々とつきはじめていた。