
押入れの中で息を潜めつつ、いつ小竹に自分の存在がバレるのかと思いを馳せている大輔は、先にバレるくらいなら自分から押入れから飛び出てやろう…小竹と多鶴子の会話に耳を傾けつつそうこの後の展開を想定し始める大輔。
時を同じくして、小竹も小竹でいきなり口数が減ったのだった…そう押入れに誰かいることを妙な気配とチラ見によって気がついたのだ。普通、自分の女の部屋に誰か男らしき影があれば一目散に浮気相手ではないかとまくし立てるところ、小竹は一向にまくし立ててこなかった。
そう…小竹は押入れにいる男が大輔であると気がついてしまっていたのだ。
口数減らした小竹は、心中や脳の中を開けてみるならば、おそらく時間稼ぎをしてできることなら大輔の気配に気がつかない演技でもしてこの場から遠ざかろう…そう考えていたに違いない。
いままで怒号をあげて激情していた小竹が猫なで声で多鶴子に語らい始めるのだった…
