
「なあ、多鶴子…女というのは気変わりが早いというけど、多鶴子の乙女心も時の経過とともに移りゆく定めなのかのぅ」小竹は急にテレビのリモコンでチャンネルを変えたごとくガラリと態度を変えた。
その態度の変わりようはなにか自分に都合の悪くなったときの小竹の特徴であることを知っている多鶴子は…なにかある?直感的にそう気がついたがその都合悪い理由がなにであるかはこの時はまた知る由もなかった。
その時、ふと多鶴子は小竹の目線がいままで自分の方に向いていたのに流し目になっていることに気がついた。
間髪開けずに、多鶴子もその流し目の目線の先に目をやった…そうすると先ほど小竹が投げた椅子で空いた穴から、大輔のトレードマークとも言える白のカットソーがしっかり見えている…それは大輔の特徴的な私服なので誰がどう見てもわかってしまうのだ。
小竹がそれを知って演技してる、妙に優しくなったのもそのせいだ…多鶴子は完全にその理由がわかった。やがて、小竹は持ってきた荷物をまとめ始めるとそそくさと玄関の方へ向かった。
「そしたらな多鶴子…元気でやれよ!」びっくりするほどあっさりと多鶴子との関係を清算するかのように別れのセリフを告げて多鶴子の部屋から出ようとする小竹がそこにいた。