「小竹さん…わかりました…おそらく何をいっても小竹さんはお金は借りていないというでしょう…」絶望を通り越しいわば人の常をそこに見て何かを悟った大輔は落胆というものよりいわば呆れた様子でそう告げた。
「正直、小竹さんが誠実に連絡途絶えたことを逃げれればいいかなというはしたなさをもっていたと謝ってくれたら僕はお金の件はいらないと言おうとしてました…そのお金返したら小竹さんの生活だって崩壊するだろうし…」ここに来ても大輔のバカ正直な優しさというか素直さが逆に愚かさに映るほど露呈していた。
「お金はいいんです…ただ社会人になって人と人の結束というか熱さというものの真の姿をみたくて…でもそんなに綺麗なものじゃなかったかな…」赤ちゃんから大切なおもちゃを取り上げてしまったときのような罪悪感をこのとき小竹は少しでも感じていただろうか。
「またお金稼げる仕事みつけて再出発すればいいんです!」大輔はなんだかもう腹の中は決めているといった晴れやかな表情をしている。「僕…シーラーカンスみたいにまた海底からスタートしようと決めましたから!」