
やがてタクシーは繁華街からかなり離れ閑静な住宅街にある…とは言ってもお世辞にも高級感あるかといわれればそれとは無縁でむしろ生活感に満ちた集落にたどり着いた。
恋人同士であるならばそのムードのなさに彼女の方がげんなりするようなロケーションに部屋ではあったが、茉莉花には到底そんな感覚ではなかったので元のテンションのまま両手に持ちきれないほど買い込んだお菓子につまみに酒を持って上がり込んだ。
部屋に入り込んで茉莉花か初めに感じたのは、徳俵には妻子があることを聞かされていたから部屋には家族の痕跡があるものだと思い込んでいたが、なかは荷物は少なく何人かが暮らしているとは思えないくらい生活感のないものだった。
「あれ?徳俵さんて奥さんと子供さんがいらっしゃるんでなかったでしたっけ?」茉莉花は素朴に不思議に感じたことを徳俵に尋ねた。
「ああ…この仕事は不規則過ぎて女房と子供が嫌がってね…不仲もあって別居してるんだ。」
それを聞きながら、茉莉花は1本目の缶チューハイのプルタブをあけ喉にかきこむようにしてガブのみした。
