
大輔の持っている名刺というのは、臨配になる際に赴任先の販売店に携帯の番号などを口頭で伝える手間などを考えた場合に、名刺で渡せたらいろいろ便利ということで臨配になる契機にデザインしてもらい作成したものだった。
なので、特定の販売店の看板は特には明記されておらずに、ただ臨配の簡単な説明として新聞配達や◯◯新聞、△△新聞といったワードは名刺のそこかしこに散りばめられているようなものであった。
大輔はその名刺をカバンの奥底をかき混ぜやっと掘り当てるように手にすると、まだあまり渡してないがゆえ100枚束のうち90以上はまだ残っているだろうもののなかから、不慣れでぎこちない作法で彼女に手渡した…
彼女は、その名刺を手にし、慣れない日本語をたどたどしく片言でなぞるように音読している…大輔のフルネームもわりと簡単な名字であるからか、なんとなく読み上げてみせた…
するとある単語でピタリと音読をしている口が止まったような気がした…「◯◯新聞…」大輔はその意味を後々知ることになるとは思いもしなかった…