
カブも物陰に停め、自身も建物の隙間に入り込みいよいよ張り込みを開始した茉莉花。初秋とはいえ体を動かさずにじっとしていると30分もせずに体は冷え凍えてきた。
そんなこともあろうと、温かいミルクティーをまえもって懐に忍ばせていた茉莉花はまだ誰も現れぬ気配に飽きもきたのかペットボトルのキャップを回しミルクティーに口を付けた。
その時だった!あの新聞配達するものならわかるカブのエンジン音とギア変速の音、そしてスタンドを下ろす音が商店街のアーケードに助長され木霊すようにしてはるか前方から聞こえていきた。やがてその人影が鮮明になり認識できる距離まで近づいてきた…
「あ!袖さん!」袖さんとはライバル紙で同じエリアを配り、よく道端でもすれ違うので小休止のときに世間話をする仲の30代前半の女性だった。