
だんだんと茉莉花のしゃがみこんで隠れている場所まで近づいてくるカブ。はじめは随分、小柄な男だなと思っていた茉莉花だったがいよいよ顔が見える位置まで近づいてくるとその顔を凝視した茉莉花は絶句した!
それはなんと、奨学生仲間の玲だった。玲は茉莉花が向日葵なら玲は月見草とお世辞にも朗らかとは言えないキャラクターだったが、茉莉花が販売店でドラブルに巻き込まれるたびに励まし、勇気づけあってきた間柄だった。
それにしても、茉莉花は不思議でならないことがあった。販売店の周りにはいくつかの区域があり違う区域であっても通過点であったりすると顔を合わせたりすることはあるものなのだが…
玲の区域は線路を挟んで茉莉花の区域と真逆に位置するのでこちら側にいることは絶対にないはず…茉莉花はいよいよ何かしら不穏なことが起こる気配をひしひしと感じていた。