
所長が名刺を差し出すことから始まった腹の探り合い合戦。
そのまだ始まらぬ戦の前の緊張感というのは、普段からどんな表情をしていてそもそもどんなものであったかも忘れてしまうくらい固まる瞬間である。
新聞奨学生センターの理事として幾多の職場環境の改善を試みて、成功させている自信からなのか理事にはいくらか所長をどう転がしてやろうか…そんな余裕すら感じられる態度である。
「所長…今日はこちらの販売店にいる奨学生の業務の量や内容の確認に参りました!」さらに理事は続ける
「まずは今年の販売店への訪店から、実際に奨学生の業務の改善にまで至った件数なのですが…」
それは理事からの華麗なる先制パンチであった…