
ゾクゾクと寮から作業場に降りてくる従業員に目を凝らしていたかける。
かけるが目を凝らしていた理由というのも、自分が同じ販売店で配達のバイトをすること全く知らない茉莉花と鉢合わせになった時に、もちろん驚くであろう茉莉花に対してどんなリアクションで接したらいいかわからず緊張していたからである。
「茉莉花先生!」いよいよその瞬間は訪れ、どうしていいかを回想していたにも関わらず緊張もあってかただただ茉莉花の名前を呼んで呼びかけるしかなかったかける。
かけるがなぜ深夜の朝刊どきに販売店にいるのか…自分に付きまとってこんな時間に現れているのか…
もちろん、生徒と先生という間柄にあって男女を意識するような出来事があって以来、嫌悪感があって距離をおいているわけでなくて出くわして気分を害するといった類の感情ではないのは茉莉花自身も感じていた。
この瞬間の茉莉花の複雑な乙女心ばかりは誰も把握する術はなかった…